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けんこう定期便No.15 スポーツバイオメカニクス

名古屋大学総合保健体育科学センター
センター長・教授 池上康男先生(プロフィール

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人の動きを機械に見立ててスポーツをとことん科学する 〜スポーツバイオメカニクスの世界〜

興奮と感動の内に閉幕したロンドンオリンピック。史上最多となる38 個のメダルを獲得した日本勢の活躍は、まだ記憶に新しいところですね。今回お招きした池上康男先生が“スポーツバイオメカニクス”の世界を目指したきっかけも、まさにそのオリンピックにあったとか――豊かな知識を持たれる池上先生に、人を機械として見ていく“スポーツバイオメカニクス”のポイントを、わかりやすい小話にまとめていただきました。
力強く、時にしなやかなアスリートたちの動きを思い出しながら、カラダの内面、カラダの動きを科学する“スポーツバイオメカニクス”の世界を覗いてみてください。

時速150km の豪速球、そのナゾに迫る

スポーツバイオメカニクス。“バイオ”というのは、みなさんご存じですよね。“スポーツ”が頭に付いていますけど・・・バイオメカニクスというのは「バイオ」と「メカニクス」が合わさった言葉です。人や動物、まあ生物と言ってもいいんですが、それらの動きを調べる学問なんです。どうしてチーターは100km/h ぐらいで走り出せるのか、なぜカンガルーは飛んでも疲れずに走れるのか――そういう動きを“とことん”調べています。そこから、ヒトはなぜ150km/h の速球が投げられるのか、スポーツのそういうところを見ていこうとする世界です。

科学技術の進歩が、個性を奪ってしまった!?

スポーツバイオメカニクスで最初にやらなきゃいけないこと、それは「動きを正確に知る」ということです。「どうやって動いているか」を“正確”に調べます。昔だったら目で見るしかないですよね。あるいは写真で“ある瞬間”を見るしかない。それが今では、誰もが使えるビデオカメラで、プロの選手や手本とする先生の動きと自分の動きはどこが違うのか、簡単にわかっちゃう。それを繰り返しやっているものだから、みんな似てきちゃって・・・今はプロといえども、非常に個性が少ない時代ですね。

ナゼできないのか?それを教えるのが指導者

初心者を教えるときには、「求める動きができないのはなぜか」、これを知らなきゃいけない。スポーツ指導者の講習会にもよく行きますけど、「なぜその動きができないのか」を知らない指導者って、結構多いんですよ。「何でできないの?」と言ってしまっている。絶対言っちゃいけない。指導者がそれを言ったらおしまいですよ。「あなたができない原因を、僕はわかっていますよ。だから安心して、僕の言うとおりに少しずつやってみましょう」そう言えなかったら、指導者としてダメですね。こうした“原因”も、スポーツバイオメカニクスで探っています。

力があれば何でもできるというのは大ウソ

スポーツをやるというのは、「いつどこでどんな風に力を出すのか」「いつどこで力を抜けばいいのか」そういうことがわかるということです。だから、どこで力を入れるか、どこで力を抜かなきゃいけないかがとても大事になります。「力さえあれば何でもできる」というのは迷信です。例えば150km/h の速球を投げるピッチャー。そのピッチャーと同じように筋肉がついている選手がいても、150km/h の球を投げられるものではありません。それは、タイミングがうまくいっていないから――それがスポーツなのだと思います。

機械としてヒトを見ると、みな同じ構造を持っている

運動するカラダを、運動する機械だと考える。見なす――それがスポーツバイオメカニクスの基本です。もちろん生身の人間ですから、機械とはずいぶん違う面もありますが、機械=ヒトの動作原理を調べるというアプローチをします。だから「車はどうやって動くのかな?」と車をばらすのと同じように、人間の場合も「中がどうなっているのか?」を、どうにかしてわかろうと努力しています。言えるのは「機械としての構造(=骨格)は、すべての人間でほぼ共通」ということ。ひじの関節が肩のように自由に動くという人は・・・脱臼している人しかいません。

池上康男先生プロフィール

1949年5月生。1974年名古屋大学理学部卒業。
専門:体育学、スポーツバイオメカニクス。主な研究分野:身体運動の3次元分析、身体運動の力学的分析。主な所属学会:日本体育学会、日本バイオメカニクス学会、日本運動生理学会、日本スキー学会、国際バイオメカニクス学会(ISB)

池上康男先生

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