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けんこう定期便No.24 あの頃のように素直な心で

画家:宮武貴久恵氏(プロフィール

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絵画に宿るエネルギーですか……。見えないのではもう、感じるしかないですよね?それにはやっぱり、美術館がいい?

そう、美術館。ちなみに私、美術館に行くときは必ず、食事をしてから行くようにしているんですよ(笑)。というのも、絵のパワーに圧倒されてしまうというか……見るだけなのに、ものすごくエネルギーが要る。創作って、普通に生活する以上のエネルギーがないと向かっていけないんですけど、そうやって画家も全身全霊で描いているから、真剣勝負というか、軽く見ようと思っても駄目なんですね。そうして実物と真正面に向き合うと、絵の持つエネルギーや気のようなものが自分の中に入ってくる。多くの絵に触れて、たくさんのメッセージをいただいて、自分の目で肌で「これはいいものだ」って感じること。そして、「人が良いと言ったから良い」じゃなく、自分の中で判断できるようになることが大切なんだと思います。

やはり実物は別物だということですか?

別物ですよね。タッチとか。たとえて言うなら……生き物ですよ。うん、本当に生き物。そこに宿るものは、図録になんか出てこない。どんなに高性能なカメラだって、やっぱりその何か≠ヘ映せない。以前、某テレビ局の社長さんが「カメラの限界を感じた」っていうぐらい。撮れないんです、絵の持っている何か=A雰囲気というのは。それを見て、感じとるためには、とにかく生の絵に触れて……いろんな絵を間近で見て、心のままに感じることが一番だと思うんです。よく「心を開いて」と言われるでしょ?そんな感じに近いのかもしれませんね。

幼い子どものように飾らない、素直な心にしか「うつらない」ものが、きっとあるのでしょうね。

宮武貴久恵氏絵の審査なんかすると、面白いんですよ。学年が上がるにつれて、絵がつまらなくなる(笑)。小学校1年、2年あたりが面白くてね、6年生ぐらいになると、もう本当に……そのまま。「姿形を再現しました」って感じになって、どんどんつまらなくなっていく。のびのびとね、おおらかに描いているものに、いいものがあったりします。それが、絵の持つ何か≠ノつながっているんだと思いますよ。大人になっていくと、だんだんに削られていってしまうから……そういう心を残していくって、難しいですよね。

お話を聞いていて、何か心が洗われたような気がします。最後にひとつ。今の時代、「現代」というテーマで絵を描くとしたら、いったい何色になるのでしょう?

今の時代って、危ういっていうか……すっきりした色にならない。混迷している感じ、ちょっと複雑で危うい感じがします。「ホリゾンブルー」って、地平線をイメージした薄いブルーがあるんですけど……強いて言えば、そうした「ブルー」でも「グレー」でもない、どちらにも向けるような、微妙な色が浮かんできます。これをすっきりした色、はっきりと時代の色にするには、現代はあまりに混沌としている。でもそれは、みんなで輝かせていかなくてはって思うんです。そして、その微妙な色を、たとえばはっきり「水色」と言えるようにするには、みんながそれぞれの世界で精いっぱい努力しないといけない、私、そう思うんです。

「ニューヨーク留学があって、旧東ベルリンの壁に「世界の平和と統合のため」の壁画を描くプロジェクトに参加、そして、ベルリンから日本に戻って震災を経験して……今ここに居るのは、自分が正しい場所に居ると思えてならない」。その素直さゆえに、時代の悲しい出来事にも心を痛めてきた宮武さん。そんな彼女が正しい場所≠ニ言う三重県の大自然を素材にした「天使の舞い降りるところ」の制作が、今進んでいます。「そこにはセンペルセコイアという巨木が育ち、大きな慈愛と温もりが感じられる。テーマのように本当に天使が舞い降りるところと思えるような、人々の希望や豊かさ、未来に向かう知恵を描いていきたい」と微笑む姿に、なぜかほっとさせられたひと時でした。宮武さんの思いが宿る「天使の舞い降りるところ」は、きっとみずみずしい、はっきりとした色に包まれた楽園になるのでしょう。

宮武貴久恵氏プロフィール

1979年 ニューヨーク・アートチューデンツ・リーグに留学/抽象表現主義の巨匠リチャード・プーセットダートに師事
1983年 ナショナルアートクラブ展名誉賞受賞
1986年 ニューヨーク・アートチューデンツ・リーグ2年連続ベストイン賞「滲み出る光」、学校の永久コレクションになる
1987年 ニューヨーク・ブロードウェイにスタジオ開設
1988年 フランクフルト・マッキャン・エクソンで個展
1989年 中日新聞「アートトレンド」欄にニューヨークの美術記事連載
1990年 ニューヨーク・ストラウス画廊でグループ展/ニューヨーク・ソーホーT&Nギャラリーで個展/ベルリンの壁に壁画を描く
1993年 14年間の渡米生活を終えて帰国
1999年 ゲーテ生誕250年を記念したフランクフルトのアートコンクール「ゲーテ99」で受賞
2001年 ベルリンのギャラリー・ゾーンFで個展/フランクフルト・マッキャン・エクソンで個展
2009年 ベルリン再訪し壁画修復/三重県立美術館県民ギャラリーで「宮武貴久枝50周年記念絵画展」開催
2014年 テーマ「天使の舞い降りるところ」で制作活動

宮武貴久恵氏

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