「やわらぎ」の商標使用中止を求める警告書について
本会会員ならびに 鍼灸師のみなさまへ
先般、横浜市内の柔道整復師の代理人(弁理士)が鍼灸師等に対し、登録商標「やわらぎ」の使用中止等を求める警告書を送付している件について、当会に情報が寄せられました。
調査したところ、鍼灸治療等を対象として、「やわらぎ」という文字の商標登録がされていることが確認できました(登録日:2021年4月7日。登録公報発行日:同年同月27日)。そのため、鍼灸院の名称や、鍼灸治療を紹介する際に「やわらぎ」という文字を使用している場合に常に商標権を侵害することになるのか、と不安を懐いている会員の方もいらっしゃると思います。
しかし、「やわらぎ」の文字を使用したからといって、常に商標権侵害が認められるわけではありません。
商標が法的に保護されるためには、その商標に他の商品・役務と識別できる力(識別力)が認められることが前提となりますが(商標法3条1項6号)、この点、鍼灸業界等において「やわらぎ」という文字が使用されている状況如何では、「やわらぎ」という文字の識別力の有無が問題となります。
また、「やわらぎ」の文字を利用している態様如何によっては、商標権の効力が及ばず、商標権の侵害に該当しない場合があります(商標法26条1項各号)。「やわらぎ」を鍼灸の効能を普通に用いられる方法で表示した場合(例:鍼灸の効能を紹介するブログなどで「鍼灸により痛みがやわらぎ、気持ちが落ち着きます。」などと書いた場合など)には、通常、商標権の効力が及ばないでしょう(同条項3号)。
このように、「やわらぎ」の文字を使用していたとしても、それが実際に使われている具体的な態様などを踏まえて商標権の侵害の有無を判断することになりますので、警告書を受け取りその対応に悩まれている方は、弁護士又は弁理士に相談することが大切です。
もし、相談する弁護士や弁理士が見つからない場合は、本会にご相談ください。
公益社団法人 日本鍼灸師会
代表理事 要 信義
顧 問 川上 詩朗