けんこう定期便No.27 トップアスリートインタビュー
人を変えるのは素直な心
~他人からのアドバイスは心と体を成長させるチャンス~
「東京2020 パラリンピック競技大会」への出場に向けトレーニングを重ねる陸上(障がい者スポーツ)選手 春田純さんは、昨年の第15 回全国大会in 静岡でご講演いただきました。今回、活動拠点のひとつでもある静岡県内の陸上競技場で、日々のトレーニング方法や体との付き合い方、「東京2020 パラリンピック競技大会」への思いを、けんこう定期便のインタビューとしてうかがいましたので、要約してお知らせします。
陸上(障がい者スポーツ)選手 春田純さん
東京オリンピック・パラリンピック競技大会への出場に向けトレーニングを重ねる陸上( 障がい者スポーツ) 選手 春田純さん。会社員として仕事を両立させるかたわら、会社が休みの日も自身の経験から得た考え方や生き方を伝えるイベントや講演活動をしており、“陸上”に関わらない日というのはないという。
春田選手は15歳という多感な時期に健常者から障がい者になった。脚を切断してからの10年間は義足であることへのコンプレックスが強く、人前に出たり買い物や遊びに行ったりすることが嫌で殻に閉じこもっていたが、25歳のときに義肢装具士の沖野敦郎さんと出会い、「もう一回陸上やったらどう?俺が支えるから」と強く背中を押してくれた。その出会いが競技選手を目指すきっかけになり、人生が180度変わったという。「彼のおかげで、義足や周りからの視線、障がい者に対する考え方が変わりました。僕一人の考え方では知識や情報に限りがあるから、いつの間にかいっぱいいっぱいになってしまってどうしても壁ができやすい。そうならないように、周りの人と触れ合って情報交換したいという考えに変わりました」。陸上を始めて様々な人と関わり、陸上を通して自身も成長したと話す。「周りの人から気づかされることが多いですね。僕はカッコつけて自分のスタイルを貫くというタイプではないので、良いことはどんどん取り入れて、反対に駄目なことは変えていくようにしたいと思います」と当時を振り返る。
現在は帰宅後18時から21時まで3時間のトレーニングを行っている。今年42歳を迎え、トップアスリートの中では最年長組の春田選手。若い頃とは違う体に合わせて練習内容も変化した。また、自分の体を素直に感じ取る感覚を大切にし、練習量や練習方法を調整してケアをしっかり行うようにしているという。現在週三回のペースで全身マッサージと、鍼灸も受けている。「鍼は『この筋肉本当にダメだな』っていう時にやっています。例えば、ふくらはぎがカチカチで、指圧では回復が難しい深い部分まで固くなってしまったときは鍼をしたりお
灸をしたり、ツボに刺激を与えてバランスを整えています」。専属のトレーナーはおらず治療院の先生がその役割を担っており、今のコンディションを話してアドバイスを求めるという。「体のメンテナンスはすごく重要です。メンテナンスを怠ると選手として潰れてしまいます。ぜひ鍼灸師の方にも練習現場へ来ていただいて、選手の体を診てもらいたいです。そして、感じたことを選手にどんどん言っていただいて、選手もアドバイスを受け入れて変えるべきところは変えていく必要があると思います」。
日本記録を出してもなお自身の成長を止めない春田選手。自ら積極的にアドバイスを求め、素直に受け入れて行動に移す。それが、アスリートとしても人としても輝き続ける秘訣ではないだろうか。東京パラリンピックは障がい者アスリートを近くで見る絶好のチャンス。春田選手に、そして世界から集まるトップアスリートたちのパフォーマンスに注目したい。
(日鍼会ホームページ・けんこう定期便No.27 要約/広報普及委員会)